産後ケア

「ママたちが非常事態!? ~最新科学で迫るニッポンの子育て~」

NHKスペシャルより・・・

女性が子を産み、母になる。その時、母親たちの脳や体に、驚くような変化が次々と起こることが、最新科学から明らかになってきました。

人類進化の過程で、育児を成 し遂げるための特別な能力が、お母さんたちに備わってきたのです。

ところが、ニッポンのお母さんたちは今、子育てに深刻な悩みや不安を抱え、悲痛な叫び声をあげています。

助け合いたい夫に対しても、出産後はなぜかイライラが止まらず、離婚の危機も。

母親たちが結びつきを求める「ママ友」は、日本特有の社会現象として世界からも注目されています。

なぜ母親たちは、これほど育児に苦しめられているのでしょうか?原因を最新科学で探ると、意外にも、人類700万年の進化にまでさかのぼる、子育ての知られざる真実が見えてきました。

これは、育児世代だけでなく、母親から生まれ育てられた全ての人たちの知的好奇心を揺さぶる、科学エンターテイメントです。

▶ 子育てが孤独で耐えられない!不安ばかり募ってしまう!どうして?

ある調査によれば、「子育てで孤立を感じる」というニッポンの母親は7割。

また、出産を機に“うつ”を発症する「産後うつ」は、一般的なうつの5倍以上。なぜ産後のママたちは、孤独や不安を感じやすいのか。

実は、科学的な理由があることがわかってきました。

鍵を握るのは、女性ホルモンのひとつ「エストロゲン」です。

胎児を育む働きを持つエストロゲンは、妊娠から出産にかけて分泌量が増えますが、出産を境に急減します。

すると母親の脳では神経細胞の働き方が変化し、不安や孤独を感じやすくなるのです。

なぜそんな一見迷惑な仕組みが体に備わっているのか?その根本原因とも考えられているのが、人類が進化の過程で確立した、「みんなで協力して子育てする」=「共同養育」という独自の子育てスタイルです。

人間の母親たちは、今なお本能的に「仲間と共同養育したい」という欲求を感じながら、核家族化が進む現代環境でそれがかなわない。

その大きな溝が、いわゆる“ママ友”とつながりたい欲求や、育児中の強い不安・孤独感を生み出していると考えられています。

「人類本来の育児」とも言える「共同養育」とはどんなものなのか。番組では、今なおそれが受け継がれている、アフリカ・カメルーンの部族を訪ね、驚きの子育てぶりを目撃しました。

▶ 夜泣きやイヤイヤがひどいのは、自分の子育てが間違ってるから?私って、母親失格?

ただでさえ不安や孤独を感じやすい母親たちを、さらに追い詰めるのが、激しい夜泣きやイヤイヤなど、母を悩ませるわが子の不可解な行動の数々です。

うまく育てられないのは自分だけでは?と思い詰めてしまうママたちも少なくないと言います。

しかし、最新の脳科学で、夜泣きやイヤイヤは人間の子ども特有の“必然的な行動”であることが明らかになってきました。

原因はいずれも、生まれた時の子どもの脳が、成人に比べて非常に未発達なことにあります。

多くの動物は、生まれた時から脳がかなり成熟していますが、人間はあまりに脳が小さく未熟な状態で生まれてくるのです。

そしてその後10年以上の歳月を掛けて、ゆっくりと脳が成長していきます。その過程で起こるのが、夜泣きやイヤイヤといった不可解な行動の数々というわけ。

中でも最もママたちを悩ませるのが、2歳頃から始まる「イヤイヤ行動」です。

その原因は、脳の表層にある「前頭前野」と呼ばれる部分が、まだ機能し始めていないことにあります。前頭前野は、目標達成のために衝動的な欲求を抑える脳機能の中枢。

これが未発達なうちは、脳の中心付近からわき起こる本能的な欲求を抑えることが出来ず、イヤイヤ行動が引き起こされてしまうのです。

イヤイヤ行動とは、まさに子どもの脳で前頭前野が成長しようと頑張っているサインとも言えます。

お母さんの育て方が間違っているからではありません。

でもなぜ人間の子どもは、そんなに未熟な脳で産まれてきてしまうのか。番組ではその根本原因も、人類進化の視点から解き明かしました。

▶ 出産後、なぜか夫に対してイライラが止まらない!助け合いたいのに、どうして?

6歳未満の子どもを持つ育児家庭を対象にした調査によると、子どもが0~2歳と育児が大変な頃に、もっとも離婚が多いという衝撃の事実が。

「産後クライシス」とも呼ばれ、社会問題にもなっています。

実はまさにこの産後間もない時期にママたちの多くが感じやすいのが、「夫への強いイライラ」。育児で助け合いたい夫に、なぜかいちいちイライラしてしまう理由にも、母親の体内で分泌されるホルモンが密接に関わっていることがわかってきました。

そのホルモンの名は「オキシトシン」。

出産時や産後の授乳時、わが子と触れあっている時などに多く分泌され、脳に作用して、わが子やパートナーへの愛情を強める働きをしています。

ところが最近、愛情だけでなく、同時に「他者への攻撃性」を強める作用もあることが明らかになりました。

たとえ夫であっても、育児に非協力的な人は「攻撃の対象」となり、イライラ感が強められて夫婦関係の破綻を招く恐れもあるというのです。

では、オキシトシンを「攻撃性」ではなく「愛情」を強める方向に働かせるには、どうすればよいのか?

番組では、育児中の母親のストレス状態を、心拍や副交感神経の変化から測定し、何をしている時に母親がリラックスして、愛情が強められやすい状態になるかを調べました。

すると意外なことに、夫が妻の育児相談に真剣に耳を傾けているだけでも、妻のリラックス状態が安定して続いていることがわかったのです。

実験に協力してくださった専門家によれば、大事なポイントは「育児で常にストレスを抱えがちな妻の状況に、“寄り添い”の気持ちを示すこと」。

物理的に子育てを分担することももちろん大切ですが、一人で頑張る母親たちのつらさを理解し、共感し、「よくがんばってるね」と認めてあげることが、オキシトシンの作用でイライラを感じやすいママたちの心を安らがせ、円満な夫婦関係にもつながると考えられるのです。

番組では、オキシトシンが愛情だけでなく攻撃性も高める不思議な仕組みを、ユニークな実験で解き明かしました。