不妊鍼灸の臨床研究

◎飯伊鍼灸師会不妊プロジェクトチームの報告(長野県生殖不妊症研究会にて報告)

◆不妊症患者に対する鍼灸治療(第2.3報)(平成19年~21年)

【考察】
① 一昨年(6ヶ月間)の報告では25例中4例(16%)が妊娠、昨年(1年6ヶ月間)は32例中14例(44%)妊娠、今年(2年9ヶ月間)は44例中26例(59%)となった点では、一定期間鍼灸治療を継続することにより、妊娠し易くなるのではないかと思われる。
② 心身症状、月経状態は全体的に改善傾向であった。
③ 元々心身症状が強い方ほど鍼灸治療により改善し、妊娠に結びつく傾向がある。

◆不妊症患者に対する低周波鍼通電療法についての検討(平成23年)

【結果】途中から腰臀部の低周波鍼通電療法を併用した9例のうち6例が妊娠に至った。
【考察】従来の腹部圧痛所見を改善させる配穴(本治法)、基本穴(標治法)でも、自覚症状、他覚的所見の改善は認められるが、骨盤内の自律神経領域に対する腰臀部の刺激は置鍼刺激より、鍼通電刺激の方がより効果が高まる可能性がある。

◎その他学会報告(明生鍼灸院さんの報告)

◆鍼治療はART難治症例の妊娠率向上に寄与するか?(日本生殖医学会の報告)

 体外受精・顕微授精(以下ART)を5回以上行っても妊娠に至らなかった患者(114例)に鍼治療を行ったところ、49例(43.0%)が妊娠に至りました。
また、10回以上ARTを繰り返すも妊娠に至らなかった26例中13例(50.0%)が妊娠に至り、その内9例(34.6%)は鍼治療後1回目の胚移植で妊娠に至りました。
 妊娠に至った49例中4例は自然妊娠でした。
胚移植にて妊娠した44例中30例(68.2%)は鍼治療後1回目の胚移植で妊娠に至り、さらにその内9例(30.0%)はそれまでにARTを10回以上経験していた非常に難治性の高い症例でした。
 また通常の鍼治療に加えて、仙骨部鍼治療を併用した群では妊娠率は変わらなかったものの妊娠までに要した期間が短くなりました。
 以上の結果より鍼治療はART難治症例に対して妊娠率向上に寄与する補完医療であると考えられました。

◆『 子宮内膜形状不良患者に高度生殖医療と鍼灸治療を併用した57症例 』

共同研究:竹内病院トヨタ不妊センター所長(現 おち夢クリニック名古屋院長)越知正憲先生
ホルモン剤を使用しても子宮内膜が厚くならない方に対して、鍼灸治療を併用したところ、約6割に子宮内膜の改善がみられました。また改善された方のうち、約5割が妊娠に至りました。
これにより子宮内膜形状不良の方に対して、鍼灸治療が有効であることが分かりました。

◆『 中リョウ穴刺鍼が不妊症患者の子宮・卵巣血流に及ぼす影響 』
    共同研究:竹内病院トヨタ不妊センター(現 俵IVFクリニック院長)俵史子先生
       明治国際医療大学臨床鍼灸医学Ⅱ  北小路博司先生   本城久司先生
 鍼灸治療後に、子宮動脈の約9割が抵抗値減少・子宮放射状動脈も約7割が抵抗値が減少しています。
血管抵抗値が減少したことは、鍼灸治療により子宮の血流が改善した事を示しています。

子宮動脈の血管抵抗値(RI:resistance index)

◆『陰部神経鍼通電療法は採卵結果を向上させるか』

骨盤内の臓器に関連する神経の一つである陰部神経に鍼と電気の刺激を併せて行った結果です。
同じ卵巣刺激条件下で陰部神経鍼通電療法を3周期行った後の採卵において45.3%の周期で採卵個数が増加しました。
卵巣にある卵子は1周期で成長してくるわけではなく、 少なくとも3か月以上かけて成長することが知られています。
今回の結果から、卵子が成長する3ヶ月の間しっかり鍼灸治療をしておくことで採卵個数が増加する可能性が考えられました。

◎その他海外での報告

【胚移植日に鍼灸治療を行うと体外受精、顕微授精の妊娠率を上昇させる】
胚移植日に鍼灸治療を行なうと体外受精、顕微授精の妊娠率を上昇させる273例を研究対象とし、鍼を行なわない組では22%の妊娠、鍼治療組では36%の妊娠率となり、鍼灸治療を行なった組に有意に妊娠率が高くなった。(2006年デンマークの報告)

【体外受精例に鍼灸治療を3回行い、鍼治療群に妊娠率が高かった】
体外受精と顕微授精例の黄体期に鍼治療を行なうと妊娠率が有意に高かった225例を対象としたもの。鍼灸を行なわなかった組では13.8%、行なった組では28.4%の妊娠率で、鍼灸治療組の妊娠率が高くなった。(2006年ドイツの報告)

【体外受精例に針灸治療を3回行い、鍼治療群に妊娠率が高かった】
体外受精例に鍼治療を3回行い、鍼治療組に妊娠率が高くなった例228例を対象に、hMG(排卵誘発剤)注射時、採卵前、採卵直後に鍼を行なった。行なわない組では23%、鍼治療組では31%の妊娠率で、有意差はなかったが、鍼治療組に妊娠率が高くなった。(2006年オーストラリアの報告)

【体外受精と併用された鍼灸治療は妊娠率を向上させる】
メリーランド大学、ジョージタウン大学産婦人科は過去の7件の臨床試験のデータをまとめた。鍼治療を併用した胚移植は、鍼治療を受けた群の臨床的妊娠は1.65倍高く、継続中の妊娠は 1.87倍、生児分娩率は1.91高く、鍼治療は妊娠率の高さと関連していたと発表。(2008年アメリカからの報告)

【多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)に対する鍼治療効果を検証】
アメリカのUSニュース&ワールドレポートは、2009/07/09のニュースで医学誌「American Journal of Physiology-Regulatory,Interative and Comparative Physiology」に多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)に対する鍼治療効果の臨床研究結果論文について紹介。
鍼治療効果の臨床研究結果論文について紹介 20人のPCOS患者を対象に低周波電気鍼治療の効果を検証。結果として「低周波電気鍼治療と運動療法を行った群では、運動療法のみのコントロール群に比べて交感神経の活動レベルが低下したことがわかった」と紹介。また、16週間にわたって行われたこの研究の結果、低周波電気治療と運動療法を組み合わせた群では、交感神経の亢進と関連するテストステロンのレベル低下がみられただけでなく、月経周期の安定も確認されたと伝えている。

【電気鍼治療により体外受精での出産率が向上】
2011/9/27 ロイター通信「電気鍼治療により体外受精での出産率が向上」医学誌「Fertility and Sterility」の記事によると、北京大学の研究で309人のIVF治療患者を無作為に三群に分けて、第一群に対して受精卵を子宮に戻した30分後に電気鍼治療を実施、第二群に第一群の治療に加え受精卵を戻す前日に電気鍼治療を、第三群には受精卵を子宮に戻した30分後に偽電気鍼治療をそれぞれ行った。  出産率は鍼治療群で37%、偽鍼治療群では21%となり、有意差があったという結果です。また、第一群と第二群の出産率には有意差がみられなかった。(論文出典)

【鍼治療が米国で不妊治療患者が最も利用している代替医療】
米国USニュース&ワールドリポート2009年10月21日付の記事で、米国カリフォルニア大学の研究チームが不妊症治療患者調査により、鍼治療が体外受精など不妊治療中に利用する代替医療の中で最も多くの患者が利用するものであることを紹介。  米国生殖医療学会の年次研究大会で発表された生殖医療と代替医療に関する研究について紹介、米国の431人の不妊治療患者を対象に鍼治療を含めた代替医療の利用状況を料刺した研究結果を解説。ニューヨークでは、47%が代替医療を活用し、90%以上の利用者が代替医療に効果があったと回答したとのこと。(メディアによる記事)“Alternative Treatments May Boost IVF Success”U.S.News &World Report – Oct 21,2009